静かに、丁寧に、育てる

「良い学舎」とは何か。
この問いを、この20年間、蒲郡で小さな学び舎を続けながら、ずっと考え続けてきた。
塾業界で35年やってきた今も、その答えを明確には持っていない。
もちろん生活のために働いている。けれど、それだけではとても続かない仕事だ。
今の塾業界にはさまざまな形がある。
集団授業、個別指導、自立学習、ICT活用型。
どれも一長一短があるし、どれか一つが正解ということもない。
だからこそ大事なのは、教え方そのものではなく、その子にどれだけ本気で向き合えるかだと考えている。
心理学でいう「ラポール」、信頼関係をどう築くか。
結局のところ、教育は人と人との関係の中にしか存在しない。
この20年間、ICTも積極的に取り入れてきた。
電子黒板や動画教材も導入してきた。
けれど、道具はあくまで道具だ。
教育の本質は、目の前の一人の生徒とどう向き合うかという姿勢にある。
それは、どれだけ時代が変わっても変わらないと思っている。
これまで何百人もの生徒を送り出してきた。
最初の教え子はもう親になっていると聞く。
それでも、私にとって大切なのは、いつでも“目の前の一人”だ。
だから学舎を大きくしようとは思わない。
今あるこの場所で、できる限り深く、生徒と関わり続けたい。
以前聞いたパン職人の話を、ふと思い出す。
毎朝、真心を込めて生地をこね、
少量ずつ丁寧に焼き上げるその店のパンは、
口コミで評判となり、
開店前から行列ができるようになった。
けれど、その職人は、店を増やすことも、大量生産に踏み出すことも選ばなかった。
「もっと手をかけて、もっとおいしいパンを焼こう」と決めたという。
私が目指す学舎も、それと同じだ。
生徒を増やすことよりも、一人ひとりとの関わりを深めていきたい。
もっと時間をかけて、もっと心を込めて、“学びというパン”を焼いていきたい。
「良い学舎」とは何か。
その答えはまだはっきりしない。
けれど、誰かの人生の糧になるような場でありたいという思いだけは、ずっと変わっていない。
Whitney Houston – Greatest Love Of All
子どもたちは未来をつくる存在であり、教育とはその可能性に光をあてて育てる行為だという信念を、静かに、しかし力強く伝えてくれる名曲が、Whitney Houstonの “The Greatest Love of All” 。
冒頭の “I believe the children are our future. Teach them well and let them lead the way”(子どもたちは未来、だからよく教え、導かせよう)という一節は、教育に携わる人にとって永遠の原点を思い出させてくれますし、”Show them all the beauty they possess inside. Give them a sense of pride to make it easier.”(彼らの内にある美しさを教え、誇りを持たせることで道は開ける)というフレーズには、単なる学力ではなく“自分を信じる力”を育むことこそ教育の本質だという深いメッセージが込められている。
この曲は、目の前の子ども一人ひとりの中にある可能性を信じ、育てようとするすべての人の背中をそっと押してくれる、まさに“教育者の心のバラード”といえる一曲。

守田 智司

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