塾長、オークション会場に行く!

先日、あきよし君と、久しぶりに会った。
有給を取ってこちらまで足を運んでくれた。
あきよし君とじっくり話すのは9ヶ月ぶり。
懐かしい声に、こちらも自然と笑顔がこぼれた。
お互いの近況や、今何に関心があり、
これから何を見つめ、どんな行動をしているのか――
そんな話であっという間に時間が過ぎた。
人と話すことでしか得られない「気づき」がある。
密度の高い時間を生きる人の言葉には、やはり厚みがある。
実は今、マナラボという教育の場の他に、私自
新たな挑戦として取り組み始めたことがある。
それは、古道具や古美術品といった“時間を宿した品々”と向き合い、
将来的にはそうしたものを扱う小さなギャラリーを開きたいという思っている。
その一環として、先日“古道具を扱うオークション会場”に足を運んでみた。
現場は想像以上に奥が深く、簡単な世界ではなかった。
この日、いくつかの商品を持ちこんだのだが、
残念なことにいくつかの品は買い手がつくことはなかった。
屋外の休憩スペースでお弁当を食べながら、少し落ち込んでいる自分がいた。
「何がいけなかったんだろう……」
そんなとき、会場で話していたグループの中に、
運営側のスタッフと思われる方がいて、少し離れたところからその話に耳を傾けていた。
はじめは声をかけるのをためらったが、思い切ってその方に話しかけてみることにした。
丁寧に自己紹介をし、今回で2回目の参加であること、
そして持ち込んだ商品に買い手がつかなかった理由が知りたいと、正直な思いを伝えてみた。
その方は穏やかに、こう教えてくれました。
「ここはプロ同士の場で、買い手は店舗を構えるプロの方が中心です。だから、商品は“素材”であることが求められます」
「すでに手が加えられてしまっていると、それぞれの店の仕上げ方に合わず扱いにくいことがある。だから、なるべく加工前の状態で出してほしいんです」
――まさに目から鱗の言葉だった。
私は「整えておいたほうがいいだろう」と思っていたことが、実は逆効果だったのかもしれない。
声をかけなければ、この視点は得られなかった。
“聞く”ことで、はじめて自分の中の基準が変わっていく。
この出来事の直後、ふと思い出した言葉がある。
“A single conversation across the table with a wise man is better than ten years mere study.”
― Henry Wadsworth Longfellow
「賢者との一度の対話は、十年の独学に勝る。」
どんなに本を読んでも、ひとつの会話がもたらす衝撃には敵わないことがある。
今回の体験はまさに、その言葉の意味を実感するものだった。
この一連の出来事を通じて強く感じたのは、
「知らない世界に飛び込むこと」と、「人と話すこと」の価値です。
見知らぬ場に足を運び、
自分から声をかけることは勇気のいる行為だが、
そこから得られるものは想像以上に大きい。
それはきっと、学びも同じ。
知らないことに出会ったとき、立ち止まるのではなく、一歩踏み出すこと。
それが、次の景色を変えるのだ。
私の挑戦も、まだ始まったばかり。
でもこの経験は、生徒たちへの言葉にも、私自身のまなざしにも、きっと少しずつ還ってくる――
そう感じています。

守田 智司

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