教育業界は今、どう変わろうとしているのか

企業が次々と業態を変え、新たな収益源を開拓し、未来への布石を打っている。
写真フィルムから医療へと進んだ富士フイルム、重機からIoT建機に進化したコマツ、
家電販売から住宅・家具総合業へ舵を切ったヤマダ電機——。
これらの企業が変化を受け入れ、次の10年・100年を描こうとしている今、
では「教育」はどうか?
1. 「教える」から「学びをデザインする」へ
かつての学習塾や学校は、教科書の内容を教え、受験に合格させることが目的だった。
だが、今や情報はどこにでもあり、知識の価値は“持っていること”から“使えること”へと変わった。
この変化に対応して、多くの塾や教育機関では以下のような変化の兆しが見られる。
✔ カリキュラムの個別最適化
AIやデータを活用し、子ども一人ひとりに合わせた学習内容や進度を提供する個別最適化教育が進んでいる。
✔ 映像授業・オンライン学習の常態化
コロナ禍を機に、リアルな教室に通わなくても学べる仕組みが加速度的に進化。塾業界でも「対面+映像+個別サポート」というハイブリッド型が主流になりつつある。
✔ 「非認知能力」や探究学習の重視
ただ“解ける子”ではなく、“問いを立てる子”が求められる時代に。
受験指導だけでなく、思考力・表現力・感情のコントロールなど、「目に見えない力」も教える対象に変わってきている。
2. 塾も“業態転換”の時代へ
今、学習塾業界にも「構造改革」が求められている。
小中学生の人口減少による市場の縮小
保護者ニーズの細分化(受験特化型、探究型、オンライン重視など)
教室運営コストの高騰、人材確保の難化
これらの課題に直面し、全国の塾が以下のような対応を始めている。
✔ 「教える」から「学びを支えるコーチング」へ
塾講師が「一斉に教える先生」から、「学習習慣や思考力を導くファシリテーター」へと役割転換している。
✔ 1教室=5教科担任制から、専門コンテンツ+伴走型サポートへ
外部教材(YouTube, アプリ, AI教材)を最大限に活用し、生徒のモチベーションと管理を行う“教育パートナー”型塾が増加。
✔ サブスク化・自由選択制
月額定額で複数教科を受講できるモデルや、週何回・どの科目を選ぶかを生徒自身が決める自由選択制など、塾の提供スタイルそのものが変化。
3. 教育の未来に求められるもの
企業が「変わる力」で生き残っているように、教育業界も「変われる柔軟さ」が問われている。
教室という物理空間からの自由
一人ひとりにフィットする“自分仕様の学び”
学ぶこと自体の楽しさと意味の再発見
教育の本質は「子どもの未来を信じる力」だ。
そしてそれを支えるために、大人もまた、変化する力を持ち続ける必要がある。
おわりに
いま企業が大胆に変わっていくように、塾や学校もまた、静かに、しかし確実に変わってきている。
それはきっと、社会の変化の鏡であり、未来の準備でもある。
変化を恐れず、変化を味方につける。
それが、これからの教育に求められる力なのだと思う。

守田 智司

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