子ども時代のスポーツ経験が、大人の未来をつくる

子どもにスポーツをさせる意味とは?
子どもに「スポーツをやらせておくといいよ」と言われることはよくあります。
でも、なぜ“いい”のでしょうか?体力がつくから?
友達ができるから?――それだけではありません。
実は、子ども時代にスポーツを経験することが、
大人になってからの人生に大きな影響を与えるという研究結果が
数多く報告されています。
心理学や教育学では、「非認知能力(non-cognitive skills)」という言葉があります。
これは、テストの点数や学力では測れない力――
たとえば、やり抜く力(グリット)、
協調性、自己肯定感、責任感、感情のコントロール、
そして挑戦しようとする意欲などのことを指します。
この非認知能力は、社会で生きていく上での土台になります。
そして、この力を育てるのにもっとも効果的な活動の一つが、「スポーツ」なのです。
ある海外の調査では、
高校時代にスポーツをしていた人たちのほうが、
していなかった人たちよりも10年後の年収が高かったという結果が出ました。
体力や粘り強さだけでなく、
チームで協力する力や目標に向かって努力する習慣が、
社会に出てから評価されるからです。
実際、多くの企業は採用の際に「スポーツ経験者」に好意的だといいます。
「この人は続ける力がある」「チームでの行動ができる」といった印象を与えるからです。
意外かもしれませんが、運動をすることは学力にもプラスになります。
ドイツの研究では、
幼少期にスポーツクラブに参加していた子どもたちの学力が高かったことが報告されています。
体を動かすことで脳の働きも活発になり、集中力や記憶力が高まると考えられています。
また、特に女子にとっては、体育の時間が長いほど学力が伸びたという調査結果もあります。
これは運動によって自己肯定感やモチベーションが高まることが影響していると考えられます。
スポーツには、自己肯定感(自尊心)を高める効果があります。
「できた!」「勝てた!」「頑張った!」という経験が、子どもに自信を与えます。
また、習慣的に運動をしている子どもは学校への欠席も少なくなる傾向があるといわれています。
一方で、現在の日本では部活動の縮小が進んでいます。
先生たちの負担軽減のために、放課後の運動機会が減っているのです。
しかし、こうした時間こそが、
子どもたちにとって「人間として成長するチャンス」であることを忘れてはいけません。
今後は、学校だけでなく、地域や家庭で子どもが運動できる環境づくりが必要になるでしょう。
子どもの頃のスポーツ経験は、目に見える成績や評価をすぐにもたらすものではないかもしれません。
しかし、見えにくい力(非認知能力)をじっくり育ててくれる最良の土壌です。
それがやがて、仕事、収入、人間関係、健康、そして人生の満足感にまでつながっていくのです。
「いま、どれだけ活躍しているか」ではなく、
「未来をどう育てるか」が、スポーツ教育の本質です。
NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」のテーマ。努力や挑戦、挫折を超えて“自分らしい未来”を目指す歌詞は、スポーツで育つ心をよく表しています。

守田 智司

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