玄関先の再会

玄関の蝶番を修繕しながら、工具を片付け終えた頃だった。
ふと顔を上げると、小さな軽自動車が塾の前に静かに止まるのが見えた。
見慣れない車。
誰だろうと思った次の瞬間、運転席のドアが開く。
降り立ったのは、懐かしい顔だった。
「本明先生!」
思わず声が出た。
あの柔らかい笑顔。
もう六年ぶりの再会だったが、まるで昨日も会っていたかのような自然さで、本明先生は微笑んだ。
「ちょっとLEDのこと聞きたくてお邪魔しました。」
そう言われ、私は思わず笑った。
「LED? どうかしましたか?」
「照明を変えようかなと思って。それでね、ちょっと挨拶がてら寄ってみたんですよ」
たわいもない話が、いつの間にか、塾のこと、教育のこと、そしてお互いの近況へと広がっていった。
本明先生は、かつて大手予備校で非常に人気のある講師だった。
その先生が自分の塾「ブレイブ」を立ち上げてからの付き合いになる。
熱心なカープファンで、私と同じくブライアン・アダムスが大好き。
そして、私と同じくマレーシアが好きだった。
共通点が多いからか、久々の再会でも会話はすぐに弾んだ。
本明先生の話を聞きながら、私は考えていた。
昔ながらの塾というのは、どうしても塾長の思いが先行する。
自分の教育理念を掲げ、それに共感する生徒や保護者に来てもらうスタイル。
それが当たり前だったし、私もそうやって20年間やってきた。
しかし、時代が変わると、塾に求められるものも変わってくる。
生徒や保護者が塾に期待するもの、必要としているもの。
それは、私が理想としてきたものとズレてきているのではないか――。
本明先生の塾での取り組みを聞きながら、私は自問していた。
「大切なのは、やっぱり“求められていること”に応えることじゃないか」
そんな思いが頭を巡る。
私はふと口を開いた。
「僕は、“塾”という言葉を使いたくなかったんです」
本明先生は、静かに聞いていた。
「塾って言葉に、どうしても“強制的”とか“昔ながらの学習スタイル”っていうイメージがついてしまう気がして。だから、新しい学びの場所を作りたかったんです。2025年からの挑戦として」
本明先生は、特に驚いた様子はなかった。
ただ、私の言葉を受け止めるように、静かにうなずいた。
私は続けた。
「今の時代だからこそ、どんな学びの場が必要なのか。生徒や保護者は何を求めているのか。それにどう応えていけるのか」
考えは尽きなかった。
そして、私はふと、吉川英治の言葉を思い出した。
「我以外皆師なり」
私は吉川英治の作品が好きで、彼の言葉にたびたび励まされてきた。
この言葉の意味は、「自分以外のすべての人が師である」。
つまり、どんな人からも学ぶことができるという教えだ。
塾という場で生徒に教えてきたつもりだったが、こうして本明先生と話をすることで、私自身が学ばされていることに気づく。
やはり、本物の塾の先生と向き合い、対話を重ねることでしか得られないものがある。
話をしているからこそ、時代に合わせた学ぶ場所のあり方を改めて考えさせられたのだ。
それが、今日の本明先生との対話の中で得た、何よりの学びだった。
MANA LABO説明会のお知らせ
以下の日程で説明会を開催いたします。
- 2月23日(日)AM10:00~11:30
対象学年は、小学生から中学生までとなっております。
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新しいスタートを切るマナラボでは、お子さまの可能性を最大限に引き出し、確かな学力と未来をつくる学びをご提供いたします。
ぜひ、マナラボの新たな教育ステージをご体感ください。皆さまのお問い合わせを心よりお待ちしております。
守田 智司
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