黒字リストラと「ホワイトカラー8割消滅」を現実として考える

最近、PIVOT公式チャンネルの中にある動画をいくつか見ました。
特に印象に残ったのが、
【黒字リストラ急増中!なぜリストラは止まらないのか?】
【ホワイトカラーの8割は消滅する:冨山和彦】
この2本です。
見終わったあと、
「これは経済ニュースとして眺めて終わる話ではない」
「自分自身の人生や、子どもたちの将来と直結している」
そう強く感じました。
今日は、その動画を見て自分が感じたこと・考えたことを、
できるだけ具体例を交えながら整理してみたいと思います。
なぜ今「黒字なのにリストラ」が起きているのか
まず一番大事な点は、
今起きているリストラの多くは「業績悪化」が理由ではない
ということです。
企業が黒字でもリストラをする理由は、主に次の3つです。
① 年功序列による「人件費構造」が限界に来ている
日本企業の多くは、
若い時は給料が低い
年齢と勤続年数で給料が自動的に上がる
50代で人件費がピークを迎える
という賃金カーブを持っています。
その結果、
50代の給料が高すぎる
若手の給料が低すぎる
という歪みが生まれています。
企業は今、
「若手の初任給を上げたい」
「優秀な若者を確保したい」
と本気で考えています。
しかし年功序列のまま若手の給料を上げると、
50代・60代の給料も連動して上がってしまう。
その矛盾を解消するために、
高コスト層を減らす=リストラ
という選択が取られているのです。
② 黒字リストラは、企業にとって“即効性がありすぎる”
「企業にとってリストラはシャブ中」という言葉。
刺激的ですが、かなり本質を突いていると思います。
例えば、50代社員を一人雇い続けると、
給料
賞与
社会保険料
オフィスコスト
これらを含めて、年間で基本給の2年分近いコストがかかると言われています。
一方、早期退職で
基本給の30か月分程度の割増退職金を払ったとしても、
1〜2年で元が取れる。
しかも、
利益率はすぐ改善する
株主評価は上がる
この「効きの良さ」が、黒字リストラを常態化させています。
③ AI・DXによって「仕事そのもの」が減っている
ここでAIの話が決定的に効いてきます。
資料作成、集計、分析、報告書作成。
これまでホワイトカラーの中心だった仕事は、
RPA
生成AI
社内AIツール
によって、人がやらなくてもよくなり始めています。
若手の方がAIに慣れており、
ベテランの仕事が減る、という逆転現象も起きています。
実際に起きている「黒字リストラ」の具体例
ここは抽象論ではなく、現実の話です。
※以下は報道などで広く知られている規模感です。
パナソニックHD
構造改革の一環として、国内外で数千人〜1万人規模の人員削減・配置転換を継続NEC
黒字を維持しながら、これまでに数千人規模の早期退職制度を複数回実施日立製作所
DX・IT人材重視の経営に転換し、
旧来型部門では数千人規模の人員最適化を実施富士通
グローバル再編の中で、
日本国内でも数千人規模の早期退職を実施
共通点ははっきりしています。
「会社が苦しいから」ではなく、
「将来のために構造を変える」ためのリストラです。
AIはなぜ「究極の産業革命」なのか
冨山和彦さんの
「AIは究極の産業革命」という言葉。
これは決して比喩ではありません。
過去の産業革命との違い
蒸気機関 → 人間の筋肉を代替
電気・機械化 → 作業効率の飛躍
IT革命 → 情報の伝達・共有を代替
そしてAIは、
👉 人間の「考える・判断する」領域に入り込んできた
ここが決定的に違います。
具体的に、AIは何を奪い、何を変えているのか
すでに現場では、こんなことが起きています。
会議資料をAIが数分で作る
データ分析をAIが瞬時に行う
企画のたたき台をAIが出す
営業トークの原稿をAIが生成する
つまり、
「考えるための下仕事」
「まとめる仕事」
が一気に不要になってきている。
これが、
ホワイトカラー8割消滅論の現実的な根拠です。
それでも消えない仕事、むしろ価値が上がる仕事
冨山さんが強調していたのは、
「全部が消えるわけではない」という点です。
残るのは、
営業(人と会い、信頼を作る)
現場で判断する仕事
感情や身体性を伴う仕事
AIを使いこなす人
AI武装したブルーカラー
つまり、
デスクの中だけで完結する仕事が危ない。
正直に言えば、
最後まで頑張って、
50代でリストラされるとしたら、
あまりにも報われない
そう感じます。
「良い学校に行き、良い会社に入れば安泰」
その神話を信じてきた世代ほど、
この変化は厳しい。
でも、もう一つはっきりしたこともあります。
その神話は、もう現実ではない。
AIは脅威であり、同時に「学び直しの道具」
AIは怖い存在ですが、
同時に、年齢を超える道具でもあります。
経験を言語化する
判断を補助する
新しい分野への入口を作る
60代でも、
「考える力」「経験」「視点」は残っている。
そこにAIを組み合わせることで、
学び直しは現実的な選択肢になりました。
塾という立場から、どうしても伝えたいこと
この話は、大人だけの問題ではありません。
子どもたちの進路に直結しています。
「いい会社に入れば安心」
そんな時代では、もうありません。
だからこそ、
学び続ける力
変化に対応する力
AIを使いこなす力
一つの肩書きに依存しない生き方
これを、子どもたちに伝えたい。
60代でも学び直す時代です。
今の中学生・高校生は、なおさらです。
おわりに
黒字リストラが止まらないのは、
誰かの努力不足ではありません。
構造が変わり、AIが決定打になった。
それが今、起きていることです。
AIは究極の産業革命。
でも同時に、
人生を組み立て直すための道具でもある。
この現実から目を背けず、
どう生き、どう学ぶか。
それを考える時代に、
私たちはもう入っているのだと思います。
守田 智司
最新記事 by 守田 智司 (全て見る)
- 黒字リストラと「ホワイトカラー8割消滅」を現実として考える - 2025年12月17日
- 「正月だから」は理由にならない ー 合格者が守っていた年末年始の習慣 - 2025年12月16日
- 年末年始も受験生を一人にしない|マナラボの本気の受験生ケア - 2025年12月16日
- 愛知県立中高一貫校、2026年度入学選抜の倍率判明! - 2025年12月12日
- 「夜明けの手前を歩く」 Walking Before Dawn - 2025年12月12日

