「夜明けの手前を歩く」 Walking Before Dawn

「夜明けの手前を歩く」
夜と朝のあいだを、
そっと踏みわけて歩き出す。
東の空では、
薄いオレンジの息がひそみ、
まだ生まれきらない光が
静かに揺れている。
気温は五度。
そのひんやりとした刃が頬をかすめ、
冬の深さをそっと知らせてくれる。
街はまだ眠りの底にあり、
音という音が
どこにも落ちていない。
ただ時間だけが、
年の瀬へ向かい
静かに流れていく。
やがて太陽が
その呼吸を大きくし、
今日という一日が
そっと開いていく。
その瞬間、
ぼくの歩みもまた、
新しい朝へと
やさしくほどけていった。
⸻

Walking Before Dawn
I walk softly
in the space between night and morning.
In the east,
a pale orange breath hides,
and an unborn light
quietly trembles.
The air is five degrees.
Its cold edge brushes my cheek,
a gentle sign of deep winter.
The town remains asleep.
No sound falls anywhere.
Only time moves,
quietly,
toward the year’s end.
Soon the sun will breathe wide,
and the day will open slowly.
At that moment,
my steps, too,
softly unwind
into the new morning.
――『Maison』
ピアニスト Emilio Piano の静かでていねいな音の上に、フランスの若い歌手 Lucie の透明な声がやさしく重なる。タイトル Maison はフランス語で「家」。小さな家の窓から朝の光がそっと入るような、あたたかい雰囲気を感じる一曲だ。Lucie はフランスの音楽番組で注目された歌い手で、若さの中に深さをそなえた声が印象的。Emilio のピアノは一音ごとに息づき、聴く人の心をゆっくりほどいていく。家に帰ったときの安心感を思い出させてくれる、静かで美しい作品である。
守田 智司
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