これからの未来を見据えて──子どもたちに伝えたい「職業選び」のヒント

いま、社会は大きく変わろうとしています。AIの進化、地球環境の変動、少子高齢化の進行、価値観の多様化。こうした変化の中で、「どんな仕事に就くか」という選択は、子どもたちの人生においてますます重要な意味を持つようになっています。
本記事では、まず2024年時点での「離職率の高い業界」と「離職率の低い業界」を紹介し、その理由を分析します。その上で、これから5年、10年先に人気になると予測される職業と、その背景について丁寧に解説します。保護者の方や、将来の進路に悩む中学生・高校生・大学生の皆さんに、少しでもヒントを届けられたらと思います。
【1】離職率の高い業界(2024年時点)
まずは、現時点で「離職率が高い」とされる業界を見ていきましょう。ここでは、特に新卒3年以内の離職率と、業界全体での平均離職率に注目します。
●新卒3年以内の離職率が高い業界
1位:宿泊業・飲食サービス業(約49.7%)
2位:生活関連サービス業・娯楽業(約47.4%)
3位:教育・学習支援業(約45.5%)
4位:医療・福祉(約38.6%)
5位:小売業(約36.1%)
●全体平均で離職率が高い業界
1位:宿泊業・飲食サービス業(約26.8%)
2位:その他サービス業(約19.4%)
3位:生活関連サービス業・娯楽業(約18.7%)
4位:医療・福祉(約15.3%)
5位:教育・学習支援業(約15.2%)
これらの業界に共通しているのは、「労働時間の長さ」「休日の少なさ」「給与の低さ」「精神的な負担の大きさ」などです。特に人手不足が深刻な業界では、過重労働になりやすく、それが早期離職につながっています。また、働きながらスキルアップしにくい環境や、キャリアパスが不明確であることも、若者が定着しない一因となっています。
【2】離職率の低い業界(2024年時点)
次に、安定的に働きやすいとされる、離職率の低い業界を見てみましょう。
●新卒3年以内の離職率が低い業界
1位:電気・ガス・水道業(10.5%)
2位:鉱業・採石業・砂利採取業(13.5%)
3位:製造業(19.0%)
4位:金融業・保険業(26.3%)
5位:情報通信業(27.9%)
●全体平均で離職率が低い業界
1位:複合サービス業(郵便局や協同組合など)(7.8%)
2位:鉱業・採石業・砂利採取業(9.2%)
3位:製造業(9.7%)
4位:建設業(10.1%)
5位:運輸業・郵便業(10.3%)
これらの業界では、福利厚生が充実している、残業時間が管理されている、研修制度が整っているなど、働く人にとって「安心・安定」を感じられる職場環境が整備されています。また、専門知識や技術を活かしやすく、自分の成長が見えやすいという点も、長く働ける理由になっています。
若者たちは今、何を求めて働いているのか?
この離職率の高低から見えてくるのは、「安定性」「成長機会」「人間関係」「働きやすさ」などに対する若者の感度の高さです。今の若者たちは、単に収入の多さや企業の知名度ではなく、「自分に合った働き方」「心身の健康が保てる環境」「社会に貢献できる実感」などを求めています。
そのため、いくら伝統的に“安定”とされていた業界でも、現場が過酷であったり、将来が見えなかったりすれば、短期間で辞めるという選択をためらいません。逆に、働く中で成長を感じられ、仲間と支え合いながら意味のある仕事ができる職場には、強い魅力を感じて長く働き続ける傾向があります。
「働きがい」と「働きやすさ」の両方がそろっていることが、これからの時代において重要な就職・職業選択のポイントと言えるでしょう。
【3】これから人気が高まる職業とは(5年〜10年後)
まず前提として、これからの社会はこれまで以上にスピード感を持って変化していきます。AIやロボティクスによる自動化、地球温暖化やエネルギー危機への対応、パンデミック後の働き方の再構築、人口減少・高齢化社会の進行、そしてデジタル化された経済と教育の再定義──これらすべてが複雑に絡み合い、私たちの生活や価値観を大きく変えていくのです。
特に次のような社会的変化が予想されます
・AIやIoTを活用した社会インフラの刷新(スマートシティの拡大)
・気候変動対策と再生可能エネルギーへの本格的移行
・リモートワークや副業・複業の一般化
・健康寿命を伸ばすための医療・福祉分野の革新
・個別最適化された教育・学び直し(リスキリング)の加速
こうした社会背景の中で、注目される仕事の傾向も大きく変わっていくと考えられます。以下は、2030年代を見据えたときに、需要と人気がともに高まると予想される職種です。
●AI・デジタル系の職業
AIエンジニア、データサイエンティスト、サイバーセキュリティ専門家、XR(仮想現実)開発者
→ AIやメタバースの普及により、新たな技術を活用する力が求められます。
●医療・介護分野の職業
在宅医療支援スタッフ、介護ロボット技術者、メンタルヘルスカウンセラー
→ 高齢化が進む日本では、医療や心のケアに関する人材が不可欠となります。
●環境・エネルギー系の職業
再生可能エネルギー技術者、気候変動コンサルタント、グリーンファイナンス関連職
→ 脱炭素やSDGsの推進により、環境に配慮した仕事が広がっています。
●教育・育成の職業
ラーニングデザイナー、オンライン教育開発者、地域学習支援者
→ デジタル教育やリスキリングのニーズ拡大で、学びの在り方が変わっています。
●地域・社会づくりの職業
地域コーディネーター、移住サポート、社会起業家
→ 地方創生や多拠点生活を支える働き方が今後注目されます。
【4】これからの時代を生きる子どもたちへ
これからの時代は、「安定した会社に入る」こと以上に、「自分の強みを活かして、柔軟に働く力」が求められます。AIやロボットが活躍する社会において、人にしかできないこと──たとえば共感する力、創造する力、誰かの役に立つ実感──が、ますます大切になります。
子どもたちには、「好きなこと」「得意なこと」をしっかり見つめ、社会の変化を前向きに受け止めながら、自分らしい未来を切り拓いてほしいと思います。保護者の皆さんも、ぜひお子さんの「個性」と「時代の流れ」の両方を見つめ、進路選びを一緒に考えてみてください。未来の職業選びは、今の小さな一歩から始まっています。
【5】まとめ──未来に向けて人気になる仕事の共通点と、学生へのアドバイス
これから人気になる仕事には、いくつかの明確な共通点があります。
●変化に強い仕事──AIや環境問題、働き方改革など、時代の大きな転換点に対応できる柔軟さ。
●人間らしさが活かせる仕事──共感・創造・支援・教育といった、人にしかできない能力が求められる分野。
●社会とつながる仕事──社会課題を解決する、持続可能性を支える、地域や人を豊かにする貢献型の仕事。
●成長が続けられる仕事──学び続けることで自分も進化し、仕事の価値も高まっていくような職業。
これから進路を考える中学生・高校生・大学生の皆さんへ。「仕事は安定していればいい」と思っていませんか?「夢なんてなくても、現実的に就職できればいい」と思っていませんか?けれど、10年後、20年後も“必要とされ続ける人”でいるためには、自分に問いかけることが大切です。
「自分は何にワクワクするのか?」
「どんな社会に生きていたいか?」
「誰の役に立ちたいのか?」
その答えが、未来の自分を導くヒントになります。職業とは“夢の終点”ではなく、“夢を形にする手段”です。だからこそ、世の中の変化にアンテナを張り、自分の心にも耳を澄ませながら、柔らかく、しなやかに将来を描いていきましょう。
そして何より、失敗を恐れず、一歩を踏み出す勇気を持つこと。それが、どんな時代でも自分らしく生きるための最初の力になるはずです。

かつての日本では、「一つの会社に入り、定年まで勤め上げる」ことが人生の安定とされていました。それが正解であり、誠実さの証と見なされていた時代です。しかし今は、「自分の人生をどんな仕事と重ねるか」を自分自身で選ぶ時代へと変わりました。職業とは、与えられるものではなく、築いていくものへ──。正解は一つではありません。だからこそ大切なのは、“選ぶ力”と“問い続ける力”を持ち続けること。
マハトマ・ガンジーはこう語っています。“未来とは、今である。”
未来をつくるのは、誰でもない「今のあなた」です。今日、どんな言葉に心が動きましたか? 今日、何を始めてみようと思いましたか?その問いかけこそが、明日を切り拓く第一歩になるのです。

守田 智司

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